どぶろく特区とは

どぶろく、それは米と麹と水だけで造られる、日本古来の素朴な濁り酒です。

かつては各家庭で造られ、祭りや祝い事には欠かせない存在でしたが、酒税法の施行により自家醸造が禁止され、その文化は次第に衰退していきました。

そんな中、地域活性化の新たな一手として注目を集めているのが「どぶろく特区」です。

これは、地域の特産品としてのどぶろくの製造・販売を促進し、観光客誘致や農家の所得向上につなげることを目的とした特別な区域です。

本記事では、どぶろく特区に関してわかりやすくご説明したいと思います。

どぶろく特区とは

どぶろく特区とは、地域の活性化を目的として、酒税法の規制を緩和し、小規模な農家などが自ら生産した米を使ってどぶろくを製造・販売できるようにした特別な区域です。

「特区」とは、特定の地域や分野において、国の規制を緩和したり、特別な支援策を設けたりすることで、新たな事業や取り組みを促進するための制度です。

「どぶろく特区」は、構造改革特別区域の一つであり、酒税法の規制緩和を通じて、地域活性化を目指しています。

通常、どぶろくを製造・販売するには酒税法に基づく製造免許が必要で、その取得には年間6キロリットル以上の製造量が求められます。

しかし、どぶろく特区内ではこの最低製造量の要件が緩和され、少量でも製造・販売が可能になります。

どぶろく特区の主な目的

どぶろく特区は以下の目的で作られた制度です。

  • 地域の特産品としてのどぶろくの開発・振興
  • 農家民宿や観光農園などでのどぶろく提供による観光客誘致
  • 6次産業化の推進による農家の所得向上
  • 地域の活性化と雇用創出

どぶろく特区で製造・販売できるどぶろく

どぶろく特区で製造・販売できるどぶろくは、以下の条件を満たす必要があります。

原料

  • 特区内の農家が自ら生産した米を主原料とすること。
  • 米、水、麹に加えて、必要最小限の酸味料(乳酸、リンゴ酸など)や、発酵を促進または抑制するための添加物を使用することが認められています。
  • その他の穀物や果物などを副原料として使用することはできません。

製造者

  • 特区内で農業を営んでいる個人または法人であること。
  • 農家民宿や農家レストランなどを経営していることが望ましいとされていますが、必須条件ではありません。

販売場所

  • 原則として、特区内で自ら経営する飲食店や民宿などに限られます。
  • 特区内のイベントなどでの販売や、特区内の他の店舗への卸売販売も認められる場合があります。
  • 特区外への販売は認められていません。

その他

  • どぶろく特区であっても、酒税法に基づく製造免許の取得や、衛生管理、表示義務などは遵守する必要があります。
  • 製造免許の取得には、税務署への申請が必要です。
  • どぶろくのアルコール度数は、20度未満でなければなりません。

全国のどぶろく特区

どぶろく特区は、地域資源を活用した活性化策として注目されており、全国各地で特区認定が進んでいます。

全国で「どぶろく特区」に認定されている地域は、2023年3月時点で90か所あります。

主な地域は以下の通りです。

  • 北海道:当別町、ニセコ町、遠軽町、幕別町、遠野町、釧路市
  • 岩手県:遠野市、紫波町
  • 宮城県:大崎市、丸森町
  • 秋田県:秋田市、大仙市、横手市、仙北市
  • 山形県:鶴岡市、高畠町
  • 福島県:会津若松市、南会津町、北塩原村、柳津町、昭和村
  • 茨城県:常陸太田市、常陸大宮市、大子町
  • 栃木県:日光市、那須烏山市
  • 群馬県:沼田市、川場村、中之条町、東吾妻町
  • 埼玉県:横瀬町
  • 千葉県:御宿町、南房総市、香取市、匝瑳市
  • 神奈川県:秦野市
  • 新潟県:柏崎市、魚沼市、上越市、十日町市、湯沢町、村上市、小千谷市、阿賀町、佐渡市、津南町、長岡市、関川村、三条市
  • 富山県:砺波市、南砺市
  • 石川県:輪島市、中能登町
  • 福井県:大野市、鯖江市
  • 長野県:飯山市、小布施町、上松町、阿智村
  • 岐阜県:高山市、郡上市、白川村
  • 静岡県:伊豆市
  • 愛知県:豊田市
  • 三重県:伊賀市
  • 滋賀県:東近江市
  • 京都府:京丹後市
  • 兵庫県:篠山市、丹波市
  • 奈良県:宇陀市、十津川村
  • 和歌山県:田辺市、新宮市、北山村
  • 鳥取県:智頭町、日南町
  • 島根県:奥出雲町、津和野町
  • 岡山県:真庭市、新見市
  • 広島県:安芸太田町、北広島町
  • 山口県:萩市
  • 徳島県:神山町、上勝町
  • 高知県:梼原町、馬路村
  • 福岡県:うきは市、東峰村

有名などぶろく特区

90ヶ所ある「どぶろく特区」の中で特に有名な特区としては、以下の地域が挙げられます。

福島県 会津若松市

会津若松市「来てみらんしょ、呑んでみらんしょ」どぶろく特区

  • 歴史ある酒どころであり、どぶろく造りにも適した風土を持つ。
  • 地元の酒蔵や農家などが連携し、高品質などぶろくを製造。
  • 地域の観光資源と組み合わせたPR活動も盛ん。

新潟県 上越市

越後里山活性化特区

  • 日本有数の米どころであり、質の高い米を使ったどぶろくが魅力。
  • 地元の農家民宿などでの提供を通じ、観光客誘致にも貢献。
  • 女性杜氏によるどぶろく造りなど、独自の取り組みも注目されている。

島根県 浜田市

ふるさと弥栄どぶろく特区

  • 島根県初のどぶろく特区として認定され、先進的な取り組みが評価されている。
  • 地元の農家や酒蔵が連携し、多様な味わいのどぶろくを開発。
  • 海の幸との相性も抜群で、観光客にも人気。

岩手県 遠野市

  • 柳田國男の「遠野物語」で知られる民話の里。
  • 古くから伝わるどぶろく造りの文化を継承。
  • 地元の伝承行事や観光資源との連携も盛ん。

埼玉県 横瀬町

よこぜどぶろく特区

  • 関東地方では数少ないどぶろく特区の一つ。
  • 地元の農家や飲食店が連携し、町全体でどぶろくを盛り上げる。
  • 武甲山の伏流水を使ったどぶろくなど、地域資源を活かした商品開発も特徴。

大阪府高槻市

高槻・とかいなか創生特区

  • 「高槻・とかいなか創生特区」の通称で知られ、大阪府下ではじめてのどぶろく特区として誕生。
  • 樫田地区で製造される「どぶろく樫田」は、地元産の酒米と清らかな水を使用し、農家が丹精込めて造り上げた逸品として人気を集めている。
  • 高槻市では、どぶろくを活用した地域活性化にも力を入れており、イベントや体験ツアーなども開催

高知県幡多郡三原村

「どぶろく特区」三原村

  • 2004年に四国で初めてどぶろく特区に認定され、現在では7軒の農家が個性豊かなどぶろくを製造・販売。
  • 毎年秋に「どぶろく祭り」を開催しており、多くの観光客が訪れる。
  • 農家民宿や農家レストランでもどぶろくを提供。

どぶろく特区の楽しみ方

どぶろく特区の楽しみ方

どぶろく特区の楽しみ方は、大きく分けて3つあります。

【楽しみ方1】各地の個性豊かなどぶろくを味わう

  • 飲み比べ: 同じ地域でも農家によって味わいが異なるので、飲み比べがおすすめです。
  • 郷土料理とのペアリング: 地元の食材を使った料理と合わせると、より一層どぶろくを楽しめます。
  • イベント: どぶろく祭りのようなイベントに参加すると、様々な種類のどぶろくを試飲できるだけでなく、地元の人との交流も楽しめます。

【楽しみ方2】どぶろく造りの現場を訪ねる

  • 農家見学: どぶろく造りの現場を見学し、農家の方から直接話を聞くことができます。
  • 体験ツアー: 実際にどぶろく造りを体験できるツアーもあります。
  • 農家民宿: どぶろく造りを行う農家が経営する民宿に宿泊し、どぶろくを味わいながらゆっくりと過ごすのもおすすめです。

【楽しみ方3】どぶろくを通じた地域の魅力に触れる

どぶろくを通じた地域の魅力に触れる
  • 観光: どぶろく特区は自然豊かな地域が多いので、観光と合わせて楽しむのもおすすめです。
  • 歴史・文化: どぶろく造りには地域の伝統や文化が深く関わっているため、その歴史や文化に触れることができます。
  • 人との交流: 地元の人との交流を通して、その土地ならではの文化や暮らしに触れることができます。

まとめ

まとめ

本記事では、どぶろく特区に関して説明させていただきました。。

どぶろく特区は、単にどぶろくを味わうだけでなく、その背景にある地域の魅力を深く体験できる場所です。

ぜひ、様々な方法でどぶろく特区を楽しんでみてください。